解体作業3日目です。
約80年以上前の建物と現在の建物(木造住宅の場合)を比べた場合、
決定的に異なる点としては、建物の「強さ」の捉え方になると思います。
元々年間を通じて気温差が大きく特有の気象条件(台風、積雪)に加え、地震の多い我が国においては、
モノや材が伸縮、膨張するだけでなく、大きな外圧による曲げそしてねじれなどの現象が起こりやすい、
– つまり物質が常に「動いている」状態にあると言えます。
それらの動きをいかにうまく逃がし、いかに平衡を保つか – この命題に対して高度な技術の継承がなされてきました。
しかし、
現代の建物に対する考え方としては、
モノや材をガッチリと固めて「動かない」状態にすることが「強さ」であると捉える傾向にあります。
これは良し悪しの話ではありません。
ブルース•リーは言っています。
“相手が強さを持って向かってきても、強さでもって抵抗するのではなく「柔」でもって対抗するのだ”と。
その「柔」の考え方は建物の足元から実践されております。
そうです、お洒落同様、建物も足元は一つの生命線と言えるのです。
1階床板を取り除くと基礎部が露になりました。
土の上に礎石を置き、その上に柱を直接乗せていく工法で“石場立て”と呼ばれますが、
昔はこの方法が普通でした。もし地震で建物が揺れたとしても、
足元から礎石の上を「動く」前提で柱が立てられていますので、建物本体に負荷がかかりにくくなっています。
よく工務店の良し悪しの見分け方としての一つの答えとして言われるのが:
“基礎をきちんと施工しているかどうか”が一つのポイントと言われます。
(あくまで目安の一つとして)
80年以上前に建てられたこの家も非常に丁寧に建てられていることが一目で判ります。
それがどの様な技術だとしても、80年以上経過したこの瞬間にも評価される瞬間があり、この先もまた然り。
真のものづくりとは、人の人生を遥かに越えた時間を見据えた思いが果たしてそこにあるのか、もしくはないのか。。。
この建物は前者であることは間違いないようです。
正に心が踊る瞬間と言えます。
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